2009年05月03日

湯浅誠氏の地方紙インタビュー記事

インタビュー「暮らしと憲法」
反貧困ネットワーク事務局長 湯浅誠さん
(聞き手:長谷川武裕編集委員)
【河北新報・2009年5月1日】

●雇用が不安定化している現状をどう見ていますか。
「労働と生存がセットで危うくなってきた。
仕事を失い、一気に生活できなくなる余裕のない家庭が増えている。
滑り台の上の踊り場がどんどん狭くなっているというイメージだ。
端っこの人から落ちる。
昔は踊り場から落ちる人が少なかったが、今や普通の世帯も滑り台を落ちていくから不安が広がっている」

●失業者に対するセーフティーネット(安全網)は機能していますか。
「国際労働機関(ILO)の調査では、日本の失業者のうち失業給付を受け取れるのは23パーセントしかいない。
非正規労働者のうち、雇用保険未加入の人が約1,000万人いる」

●派遣切りや非正規労働者に対する支援活動から何が見えてきますか。
「派遣切りに遭った人の生活相談に応じる際、いろんな制度や施策を見渡すが、どれも使えない人が増えている。
社会には雇用、社会保険、公的扶助(生活保護)の三つのセーフティーネットがあるはずなのに、いきなり最後の生活保護にいくしかない状態になっている。
生活保護は不幸な役割を背負わされている。
ほかのセーフティーネットを強化しないと持たない」

●憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」は何を意味しているのでしょうか。
「最低限度の生活は単なるお題目ではない。
その具体化として生活保護法があり、厚生労働大臣告示で毎年、生活保護基準が改訂されている。
世帯人員や地域などを基準に10円単位まで最低生活費が決められている。
『これを下回ったら国が責任を持つ』と宣言している金額だ。
その最低生活費以下で暮らす人が膨大に存在する」

●どれぐらいの世帯が最低生活費以下で暮らしているのでしょうか。
「生活保護基準以下で暮らす人たちのうち、実際にどれだけの世帯が生活保護を受けているのかを示す捕捉率について、政府は調査していない。
学者調査による捕捉率はおおむね15〜20パーセント。
15パーセントとすれば、約600万世帯、850万人の困窮者が生活保護制度から漏れている計算になる。
政府が調査をしないのは憲法違反状態が明らかになることを恐れているからだ」

●生活保護制度をどう評価していますか。
「日本の生活保護は、住宅、子育て、医療も含め人々の生活を丸ごとがっしりと確保するわけだから、世界に誇れる立派な制度なのに、スティグマ(恥辱)に満ちあふれている。
実態としてはお荷物と思われがちなセーフティーネットを、社会にとって必要な経費だという見方を広げていかないといけないだろう」

●貧困と戦争の問題を一緒に考えるべきだと訴えていますが。
「貧困が大量に生み出される社会は弱い。
これまで日本では生存権の問題は取りあえず終わっているということになっていたが、今日の状況から言って、憲法9条と25条を同時に考えるべき時期に来ている。
アジアやアフリカを見れば分かるように、貧困と戦争はセットの問題だ。
衣食足るという人間としての基本的な体力・免疫力がすべての人に備わった社会は、戦争に対する免疫力も強い社会である」
posted by むーみん at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース・話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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